女性の尿漏れの原因 | 妊娠後期・出産後、更年期の尿失禁
妊娠・出産がきっかけで尿漏れの症状が出る女性は少なくありません。若い女性にとって恥ずかしいことなのでなかなか表にでませんが、妊娠中に突然尿が漏れてしまい、「え!?」と戸惑った経験のあるお母さんは案外多いそうです。
また、産後に子供を抱っこしようとお腹に力を入れたり、くしゃみをしたりすると漏れてしまうため、尿漏れパッドが欠かせないという人もいます。
今回は、こうした女性に多い尿漏れの原因について、詳しく説明します。
女性に多い腹圧性尿失禁
咳やくしゃみをした時や、急に小走りしたり坂道を早足であるいたり、あるいは重い物を持ち上げたりした時など、お腹に力が入った時に尿が漏れることを、腹圧性尿失禁といいます。
腹圧性尿失禁は圧倒的に女性に多い尿失禁で、成人女性の3〜5人に1人の割合で見られます。なぜかといえば、女性は男性と較べて尿道がとても短く、まっすぐ下を向いているために、尿道を閉める筋肉(骨盤底筋)が弱まると尿が漏れやすくなる体の構造だからです。
咳やくしゃみ、大笑いをした時、強い運動をした時などにチョロっと尿が漏れた経験がある女性は多く、稀にチョロっと漏れるくらいは正常な範囲といってもよいでしょう。
けれども、頻度が多くなったり一度に漏れる量が多くなると問題です。
女性は、妊娠・出産の影響で尿漏れが起こることがあります。また、更年期になると、今度は老化の影響で尿漏れが増えていきます。
妊娠後期の尿漏れ
子宮の中の赤ちゃんが大きくなってくると、子宮に膀胱が圧迫されて、くしゃみなどのちょっとした動作でも尿が漏れやすくなります。
さらに、妊娠中は「黄体ホルモン」が分泌されます。黄体ホルモンは、出産に備えて、子宮の周りにある靱帯や恥骨、仙骨、股関節などの関節や、関節の結合部分をゆるめ、筋肉を柔らかくする作用があります。それが、尿道を閉める骨盤底筋群までも柔らかく弱くしてしまうので、尿漏れしやすくなります。
個人差はありますが、赤ちゃんが大きい場合(双子など)や高齢出産の場合に若干多い傾向があります。
妊娠後期の尿漏れに対しては、薬による治療は胎児への影響を避けるため行わないことが多く、パッドや水分調整などで対応します。
出産後の尿漏れ
出産(経膣分娩)は、骨盤底筋群や靱帯に大変な負荷がかかります。それによって骨盤底筋群や靱帯が傷つくことがあります。
通常、大きくなった子宮やゆるんだ靱帯は産後元に戻り、90%以上の妊産婦の尿失禁は1年以内に治ります。骨盤底筋運動などによる尿漏れ予防トレーニングを取り入れると効果的です。

骨盤底筋群の損傷が大きかった場合などは、出産後1年以上経っても尿漏れが残ることがあります。そのような場合には、泌尿器科を受診することをお勧めします。
更年期の尿漏れ
尿漏れで悩む女性が一番増えるのは、40代後半以降の更年期に入ってからです。その90%以上が出産を経験した女性です。
産後の尿漏れが改善した場合でも、骨盤底まわりの弱さが潜在的に残ってしまい、それが更年期になって女性ホルモンの低下や骨盤底筋の筋力低下によって、潜在していた骨盤底まわりの弱さが表に出てくると考えられます。
出産していなくても、もともと骨盤底筋群が弱い人の場合は、更年期に筋力が低下して腹圧性尿失禁を起こすことがあります。
適切な治療を
女性は腹圧性尿失禁で悩む人が多いことや、妊娠・出産・更年期など、ライフサイクルの中で尿失禁になりやすい時期があることが特徴的です。
尿漏れパッドでの対策も有効ですが、根本的な解決になりませんので、泌尿器科を受診して、適切な指導を受けるよう心がけましょう。