高齢者の尿漏れ(尿失禁)の原因 | 加齢に伴う機能の衰えと症状
80才のBさん(女性)は、排便の後できちんと拭くことが難しいので、頻繁に膀胱炎になり、いつも尿意があるそうです。でも足が弱っていてトイレに行くのに時間がかかるため、途中で漏れてもいいように尿漏れパッドが欠かせません。それでも頑張って一人でおしっこをしています。
このように、高齢になるとさまざまな排尿トラブルが出てきます。なかでも自分の意志とは関係なく尿が漏れてしまう尿失禁は、本人も介助する側も大変です。高齢者の尿失禁は、泌尿器だけの問題ではなく、さまざまな障害が原因で起こります。
今回は、高齢者に見られる尿漏れ・尿失禁の原因についてまとめます。
膀胱・尿道の問題で起きる尿漏れ・尿失禁
主に膀胱や尿道に原因があって起きる尿失禁です。ほとんどの高齢者が膀胱や尿道になんらかの衰えがみられます。
腹圧性尿失禁
加齢によって尿道を閉めておく骨盤底筋という筋肉が衰えると、ちょっとした動作で腹圧がかかった時に尿が漏れてしまいます。くしゃみをしたり、椅子から立ち上がっただけで漏れることもあります。女性に多く見られる症状です。

溢流性尿失禁
主に前立腺肥大症などで、自分の意志では尿がでにくいにも関わらず、膀胱に溜まった尿が溢れて少しずつ漏れ出てしまう症状です。男性に多く見られます。

切迫性尿失禁
膀胱炎や神経系の異常で膀胱が過敏になっていると、急に強い尿意を感じるようになり、トイレに間に合わなくて漏れてしまう症状です。

機能性尿失禁
膀胱や尿道に異常がないものの、意識障害や動作障害が原因の失禁です。大きく分けると以下の2つに分けられます。
判断力の衰えによるもの
アルツハイマー病による痴呆で尿意を意識できなくなる、脳梗塞による神経の障害で尿意を感じなくなるなどにより、尿を垂れ流してしまう症状です。
手足の障害によるもの
脳出血の後遺症による麻痺、骨折、関節リウマチなどで、トイレへの移動やトイレでの排泄支度・後始末が独りでできない状態です。
神経因性膀胱による尿漏れ・尿失禁
神経因性膀胱による尿失禁とは、排尿を司っている神経のどこかが障害を受けることで起きる尿失禁です。
脳神経系の異常による切迫性尿失禁、糖尿病によっておきる溢流性尿失禁、脊髄損傷にみられる反射性尿失禁などの総称です。
原因は一つではない
高齢者の尿漏れ・尿失禁は、膀胱や尿道の衰えに加えて、足腰の衰えや認知機能の衰えが加わった複合的な原因のものがほとんどです。
介助する側は、膀胱炎や前立腺肥大の状態はどうか?尿意を感じているか?トイレに移動する時間はどれくらいかかるか?自分で下着を降ろせるか?などを総合的にチェックして、それぞれの高齢者の状態にあった介助を心掛けましょう。